挨拶をするときに「今朝は一段と冷えるね」「良い天気ですね」など天気の話をするのは、私たちの日常に根付いた自然な振る舞いです。
口頭以外の文書や手紙の表現でも同じです。季節の挨拶から文章を始めるのは定番であり、とても丁寧な形式ですよね。四季折々の風景があり、また空模様がうつろいやすい日本ならではの美しい習慣といえます。
だからこそ、日本語には「天気」「気候」を表す言葉の表現がたくさんあります。
俳句の季語のように文章に組み込むとパッと華やかになったり、ぐっと引き締まったり、文章を彩り立体感を与えてくれます。
また、小説や詩で空模様と心理描写をリンクさせるという手法は一般的。読者にも一瞬でイメージを伝えることができるのでここぞというときに使いたいですよね。そんなときに役立つ表現を、季語を交えながらご紹介します。
天気の表現
晴れ
- 蒼穹
- 碧天
- 夕晴れ(ゆうばれ)
- 霜日和(しもびより)
青、碧、蒼など、晴れた空の色を表す字はたくさんあります。また季節によっても“晴れ”の風景や印象は違うのが素敵ですよね。
曇り
- 卿雲(けいうん)
- 東雲(しののめ)
- 茜雲(あかねぐも)
「暗雲が立ち込める」「雲行きが怪しい」など、比喩表現で多く用られる雲。夏の入道雲や夕焼け雲など、季節と密接です。
雨
- 月時雨(つきしぐれ)
- 洒涙雨(さいるいう)
- 春時雨(はるしぐれ)
- 夕立
- 狐の嫁入り
雨を表す言葉はとてもロマンチックです。洒涙雨は織姫と彦星が引き裂かれて流した涙。春時雨は、秋から冬にかけて降る雨のことを表します。狐の嫁入りは天気雨のことです。
雪
- 銀花/銀華(ぎんか)
- 淡雪(あわゆき)
- 風花(かざはな)
- 雪あかり
- 名残雪
雪を表す言葉は数百あると言われています。銀世界、白銀のような、光り輝くイメージですよね。また風花は、風に舞う雪を表したとても美しい表現です。
季節の表現
春
- 雪解け
- 花曇
- 水の春
- 風光る
- 草萌
- 飛花(ひか)
- 花冷え(はなびえ)
- 春眠(しゅんみん)
- 花の便り(はなのたより)
春を表すときの“花”は、もちろん桜。短い春ですが、雪解けから桜が散る風景まで美しい表現がたくさんあります。
夏
- 風鈴
- 夏めく
- 朝曇り
- 朝凪
- 風待月(かぜまちづき・かざまちづき)
- 忘れ水(わすれみず)
- 蝉時雨(せみしぐれ)
- 空蝉(うつせみ)
- 風薫る
蒸し暑さや強い日差しが厳しい季節ですが、夏を表す言葉はとても情緒的。この季節朝特有のぼんやりとした朝の空や静けさを表す言葉も。
秋
- 冬隣(ふゆどなり)
- 秋晴れ(あきばれ)
- 秋入梅(あきついり)
- 水澄む
- 木枯らし
- 色取月(いろどりづき)
秋は“晴れ”と“雨”どちらの印象を併せ持つ風情たっぷりの季節です。夏が終わり“水が澄み”、冬の隣という美しい表現がたくさん。
冬
- 小春日和
- 雪晴れ
- 冬化粧(ふゆげしょう)
- 六花(ろっか/りっか)
- 風冴ゆ(かぜさゆ)
- 楪(ゆずりは)
- 東風(こち)
冬といえば晴天か、雪。冷たい空気や凜とした清々しさを感じる季節です。小春日和が“冬の暖かい日”を表す言葉ということは覚えておきたいですよね。
季節や気候を表す日本語は数限りなく存在し、古くからたくさんの創作物で使われてきました。
和歌の枕詞や俳句の季語が多いのは「その言葉に触れるだけで、気温や空模様が眼に浮かぶ」効果があるから。先人たちのセンスの恩恵にあやかって、ぜひ自作の詩や小説などで使いたいですよね。
漢字や響きが美しいものばかりなので、タイトルやキャッチフレーズ登場人物の名付けのヒントにもなりそう。工夫次第で様々な場面で活かせるので、ぜひつかいこなしてみてくださいね。