ジャンル迷子に手を。創作は楽しくが私のスタンス|草群鶏さんインタビュー

創作活動をされている方のリアルを聞く。今回は草群鶏(くさむらけい)さんにお話しを聞きました!

――まずは自己紹介をお願いします。

草群鶏というペンネームで、個人で文芸サークルをやっています。サークル名は「甘露(かんろ)」です。

活動内容としては、主にファンタジーとかご飯が出てくるようなものとか青春とか、どちらかというとティーン向けの小説を書くことが多いです。短編をメインに活動しているので、短いお話を書いてTwitter上のネットプリント企画で配信したり、自分で短編集を編んでイベントに出たりしています。

物理本を作ることがすごく好きで、装丁とかデザインとかもですね。表紙のデザインやイラストを描いたりも自分でするので、幅広くやっています。

――絵を描くのと文字を書くのとではどちらが好きですか?

あくまで絵は文章の補助っていう位置づけではあるんですが、どちらも好きですね。

ただ、頭の使う部分が違うというか、文章は疲れていると書けないです。

絵はビジュアルでテンションが上がるところがあるので、絵を描いたり表紙のデザインとかレイアウトを考えたりするのは、結構疲れてても謎のアドレナリンが出て進んだりします(笑)。

――創作活動をされようと思われたきっかけは何だったんですか?

小学校の時に読んだ荻原規子先生の「勾玉(まがたま)」三部作で、日本の古代から中世ぐらいまでの時代をモチーフにしたファンタジー小説のシリーズです。子供の頃に読んで印象に残ったというか面白くて楽しくて、自分もこういうのが書けたらいいなと思って、まあパクリみたいなお話を小学生の時に書いてたんです。

ただ中学、高校と運動部に入ってそっちに時間が全部持ってかれたので文章を書けなくなって、それきりだったんです。学校生活は部活も委員会も行事も全部やっちゃうっていうタイプでした。社会人になってお金にも余裕ができてきて、ふと私のやりたいことってなんだったっけと思った時に、本作りたかったんだと。そう思って先にイベントを申し込んで、後がない状態にして文章をわーと書き始めた、というのが5年ぐらい前の話ですね。

――最初に出たイベントは何でしたか?

一番最初に出たのは文学フリマ札幌でした。家族の都合で引っ越すことになって、バイト先の友人を唆して一緒に出ようと言って出たのが始まりです。

それぞれ勝手なものを作ってよくわからない状態で並べたというカオスなスペースでした(笑)。ジャンルも何もかもぐちゃぐちゃで、一人は消しゴムハンコを彫ってたり、とにかくそれぞれ得意なことかき集めて出していました。

――現在は作品を作るときに意識されていることはありますか?

ご飯を食べるにしても人と関わるにしても「生きる喜び」みたいなものを書きたいとは常々思っています。ほっこりほのぼのとか感動とかではなく、日々のこと、ご飯食べたりとか、歩いていて「あ、桜咲いてる」とか、そういうものを拾い上げたお話を書いていたいですね。

些細なことに面白みとか喜びとかを拾い上げて見せる、そういう物書きでいたいっていうのもあるので。滑稽というかおかしみも含みつつ、でも読んだらちょっと元気になるような、エモーショナルとか心を揺さぶるのとは違う路線で、隣にいてくれるとホッとするぐらいの距離感です。疲れた時に読んでも削られない、毒にも薬にもならないがいてくれると安心というお話が書きたいとは思っています。

――なるほど、絶妙な距離感ですね。となると日常寄りの物語なんですね。

日常の延長にひょっこり顔出した非日常ぐらいです。「あれ?こんなものあったっけ?まあいっか」って流せるぐらいの非日常を書くことが多い気はします。普通の暮らしのはずが気づいたら謎の生き物と暮らしているとか。読者の方からも「なんかありそう」「いそうだよね」って言われることがありますが、しれっと出します。

――気づけば謎の生き物!(笑)他の作家さんとは交流していますか?

今はTwitterなどでふわっとつながってやりとりしていますね。

しばらくコロナでイベントができなかったり、イベントはやってるけどお家の都合とかで家を出れない方もいたので、オンラインイベントの主催を2回しました。

オンラインイベントってどうしても(特に文芸だと)パッと瞬間で手に取るのが難しいので、イベント当日までに予習できるWebサイト組んで作ってて、Web上でアンソロジーをやったりしました。そのときにすごい(サークル参加者の)みなさんに頑張って作ってもらったのをWebだけで終わらせるのは、と思って本にしたりしました。

アンソロジーの形もいろいろで、こういう話が読みたいからみんな書いてくれっていう人もいて、そうするとニッチなお題もあったり。これがWebだと、手軽に関われるところが一番の強みですね。

――オフラインとオンラインのイベントとでは思うことはありますか?

一長一短があると思っています。リアルのイベントはその場のライブ感がすごく楽しいし、そのまま持って帰れるのもいいんですが、結局来れる人しか来れないんですよね。

オンラインイベントは家を出なくても参加できるので物理的な負担は少ないですが、たとえば注文一件ごとに送料がかかってしまうデメリットもあります。ただ、窓口をうまくまとめる手もあるので、これもやり方次第かなと。

(オンラインイベントに関しては)いろんな試みをしている人がいて、負担が少なくなるように工夫されています。広く門戸が開かれてるのはオンラインのほうですが、やり方次第っていうところもありますし、作品と読者をどう出会わせるかはまだ工夫の余地があると思っています。

イベントの時ってその場のテンションがすごく大事で、リアルイベントだと「声かけられて気になったから手が伸びた」という偶発的な出会いがあるんですが、オンラインではなかなか起きにくい。作品を事前に試し読みできるように場所を作っておくとか、自分で主催した時もいろいろ工夫しました。

――オンラインイベントを主催されたときに気をつけたことはありますか?

私が主催した「ジャンル迷子オンリー」というイベントは、コミティアにしろコミケにしろ文学フリマにしろジャンルでエリアが分けられますが、どこに行ってもなんか私浮いてる気がする……という人たちの集まりです。

自意識の問題もあるんですけど単純に検索性が下がるので、ジャンルにガツッとはまってないと見つけてもらいにくくなるんですよね。「ジャンル迷子」は中身を読まないとわからないとはじめから宣言しているので、試し読みやWebアンソロで作風を読んでいただくことが(このイベントでは)外せませんでした。

――迷子が生んだ良い企画ですね!さいごに、もし伝えたいことがあればお願いします!

「自分が楽しくてやっている」というところを忘れないようにやっていきたいなって。「ジャンル迷子」のイベントも、まずは作者が楽しめるパッケージを作って動いているし、そのスタンスをみんなで忘れないでやっていきたいなっていう気持ちでいます。

楽しそうにしてると人は寄ってくるから楽しくやろうというのが私のスタンスなので、創作そのものだけでなく、みんなで楽しくやれる場づくりもやっていきたいと考えています。

――お話いただきありがとうございました!

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