誰でも手軽に創作を楽しめる、小説。
やってみたらその奥深さにハマり、「もっと上手くなりたい!」と思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、簡単に試せる練習法を3つご紹介します。
- 特別な道具がなくてもできる小説の練習法
- それぞれどんな効果が期待できるか
手間や所要時間を加味して難易度を設けましたが、個人のタイプにもよりますので、参考程度としていただければ幸いです。
書写・音読【難易度★☆☆】
やり方
自分が「これだ!」と思う作品を、一文ずつ書く(手書きでも、パソコン・スマホでもOK)、もしくは声に出して読む。
ポイント
ただ書く・読むだけでなく、「どうしてここでこの言葉を使っているんだろう?」「なんでこの説明をここに入れているんだろう?」と、自分なりにかみ砕きくだきながら進めてみる。
効果
- 語彙力・表現力の向上
- 文章のリズムが身につく
- 物語構造への知見が深まる
- 作者の意図や思想をより細やかに吸収できる
文章練習のTHE定番です。プロも駆け出しのころは書写・音読で文章を磨くと言われるほど、効果のある方法になります。
ただなぞる・読むだけでもいい、という意見もありますが、個人的には「なぜここはこうなっているのか?」に意識しながら取り組んだ方が、より成果を実感しました。
練習量を振り返られるようにしておくと、達成感も得られ、継続のモチベーションも湧いてきます。書いたものを保存したり、読んだ量を記録したりと、気分が上がるやり方を試してみてください。
字数制限する【難易度★★☆】
やり方
字数の制限を設けて、その中で収まるように書く。
字数は何字でもOK。これまでに書いたことのないレンジにすると練習効果が更に見込める(例:長編を書くことが多かったなら、300字で書いてみるなど)。
ポイント
字数の8割、できればピッタリを目指して推敲を繰り返してみる。
効果
- 語彙力・表現力の向上
- 構成力が身につく
- 情報・描写を取捨選択する目が養われる
- 推敲して文章を洗練させるクセがつく
気にしないとどんどん増えていくのが、文章です。ゲームの縛りプレーのように字数制限することで、いつもと違う視点から書くことができます。
例えば、「勇者が魔王を倒して平和をもたらす」物語でも、字数が違えば最適な情報量や構成の仕方はまったく異なってきますよね。
10万字・5万字・1万字・5,000字・1,000字・400字と、それぞれの幅で書き方をどう変えていくか考えるだけでも、取捨選択の練習になるのでおすすめです。
デクパージュ【難易度★★★】
やり方
①参考にしたい小説を用意する
②冒頭からラストまで、「シーン」ごとに「簡単な内容」と「ページ数」をメモしていく
ex. 第1章
1-1:学校に新入生 6p
1-2:新入生を案内~謎の「異世界転生部」発見 10p
1-3:「異世界転生部」に入部・部員紹介 8p
(……以下、あとがきまで)
③ページ数を元に、各シーンのおおよその字数を割り出す
ex. 第1章(合計約17,500字、6項)
1-1:学校に新入生 6p⇒約3,000字
1-2:新入生を案内~謎の「異世界転生部」発見 10p⇒約5,000字
1-3:「異世界転生部」に入部・部員紹介 7p⇒約3,500字
(……以下、あとがきまで)
④各シーンで感じた印象と字数、それぞれの構成などから、気づいたことをメモする
ex.
「部の発見までテンポ悪く感じたけど、重要な情報が少ないわりに字数が多いからか」
「あれ、部員紹介はキャラがワイワイして楽しかったけど、案外少なめの字数だな」
⑤自分の創作で応用する
ex.
「場面の繋ぎのときは、サクサク進めたほうがいいな」
「少ない字数でも楽しんでもらえるように、キャラの掛け合いに力を入れよう」
ポイント
- まずは機械的に最後までシーン分解してしまうと楽
- シーンの判定を始め、メモはぜんぶ主観でOK
- シーン&ページ数で全体を細切れ(デクパージュ)にしてから、作品構成を俯瞰する
効果
- 構成力が身につく
- 情報・描写を取捨選択する目が養われる
- 物語がどのように創られているか深く洞察できるようになる
- 自分にはない引き出しを得られる
これは、映画分析技法のひとつ「デクパージュ」を小説に応用したものです。やり方自体はシンプルですが、シーンごとに細切れにするのに結構時間がかかるので、よっぽど研究したい作品があるときにおすすめします。
私はある有名コメディ長編を読んだときにデクパージュしたのですが、多くのヒントを得られました。一番大きな発見は、1シークエンス(シーンの集合)がどんなに長くても1万6千字までだったことです。とてもテンポのいい作品でしたが、その理由はここにあると感じました。それ以来、執筆するときはこの字数を意識するようになり、書く上での指針ができました。
とても効果のある修練法ですが、個人的に一つだけ注意していることがあります。それは、デクパージュ元の作品についておおっぴらに話さないこと。作者さんにとって作品は我が子のように大事なものですから、他人の練習のために細切れにされたと耳にするのは、あまり心証がよろしくないだろうと感じるためです。
元作品に敬意を払いつつ、他人に話すためでなく自分の創作をより充実させるために行う……そんな意識で試してみてもらえたら嬉しいです。
一番の練習法は楽しんで書き続けること
以上、3つの小説練習法についてご紹介しました。
なんのかんの言いつつ、楽しみながら自由に書き続けることが最強の上達法だなぁと思います。でも、時にはちょっとしたアクセントがほしくなるもの。そんなときにこれらの方法を試してみていただけたら幸いです!