2024年1月7日に東京都立産業貿易センター浜松町館で開催される『もじのイチ~なんのへんてつもない一次創作文芸同人誌即売会』。
小説・ライトノベル・エッセイ・詩歌など、文字や文章を主体とした創作物の展示即売やサークル・一般参加者による交流を目的とした会となっています。
主催されるのはご自身も多くのイベントへの参加、企画を行っていらっしゃるトオノキョウジさんです。
今回はトオノさんのこれまでのイベント参加の変遷、そして「もじのイチ」開催にあたっての想いをお聞きしました。
トオノキョウジさんプロフィール
シナリオライター。ロードス島戦記から書き物沼に足を踏み入れる。高校時代は文芸部部長。専門学校と通信大学を出た後、Web屋やら組み込みPGやらを経由して独立。個人サークル『クロヒス諸房』での同人活動をきっかけに、チャットノベルサイトの公式連載や少年マンガ脚本を手掛け、後に商業TL小説レーベルの立ち上げに携わり編集長を務める。現在はフリーランスでコンシューマ・スマートフォンアプリ・インディーズ等各種ゲームのシナリオ制作に参画。本業は主夫。
創作を通じて広がる人の輪
――トオノさんご自身は、イベントへの出店はいつごろからされていたんですか?
28~29歳のころに友人と一緒に同人でサークル活動を始めたのがきっかけです。
そして昔書いていた小説で改めてひとりで創作活動を始めたのが30歳のときでした。夏と冬のコミケで1冊ずつ新刊を作ったりして楽しくサークル活動をしていましたね。
――トオノさんの公式サイトを拝見したのですが、書かれているジャンルが本当に幅広いですね。
「本屋ごっこ」をテーマに、いろんなジャンルのものを並べたかったんです。こっちで汗臭いアクションを書いたから、今度は女の子が主人公の物語を、とか。そのときに書きたいものを書いて7~8年やっていました。
――イベントに出店するという体験はいかがですか?
僕はコミケやコミティアに出ることが多かったんですが、賑わっているところに参加するのは楽しかったですね。
その中で、どうやって本を売るのか常に悩みどころでした。でもあるとき、仲が良かったサークルさんと同じタイミングでヒロインものを書いていたんです。それで、「同じジャンルのものを書いているサークルを集めて何かキャンペーンをやろうぜ」というお誘いがあって、企画を立てることになりました。
そのときはヒロインものの作品で20サークルぐらい集まったかな。作品の宣伝を兼ねつつのキャンペーンをコミティアで行いました。
各サークルさんから素材をもらって僕が編集したんですけど、みなさん協力的でやりやすかったですね。とても楽しい企画になりました。
――そこから他にも企画を立てたり?
秋葉原にHUB系のショットバーがあるんですけど、そこを借り切って同人誌即売飲み会を開催しました。お友達の間でお酒飲みながらできたらっていう声があったので、じゃあやろうか、と。テーブルにサークルスペースをそれぞれ作ってもらって、飲み放題でお酒飲みながら同人誌イベントごっこをやろうというのが企画の主旨でしたね。
――こういった企画は、多くあるものなんですか?
あまり見かけませんね。このイベントはマンガも評論も小説も飲みながらやりたい人集まれ、という声かけだけで50サークルぐらい集まりました。 他にも、創作オンリーイベントの中で、自分の作品のキャラクターのトレーディングカードをみんなでつくろうという企画も主催しましたね。
――おもしろそう!
僕が作ったフォーマットに合わせてトレーディングカードを作って、イベントの会場で配って、みんなで集めて遊ぼうというものです。カードを集めるためにみんながサークルさんを回るわけじゃないですか。創作キャラクターを通じて、コミュニケーションをとってもらったり、新しい作品との出会いを手助けできたら、と思って、100枚ぐらい制作したんですけど、好評だったので、こじんまりとしたカフェを借りて、このカードだけのイベントもやりました。
――作品を書いて売るというだけではなく、コミュニケーションをとることをすごく大事にされているんですね。
そちらにだんだんシフトしていったイメージですね。1人で本を作ることはわりといつでもできちゃうというか。
遊ぶ人ー!って聞いても手を挙げる人が意外と周りにいないんですけど、場所と日付だけ決めて、みんなで集まれる機会を用意すれば、遊んでもらえるかな、と。楽しくてやっていた、という感じですね。
小さな即売会に飢えていませんか?
――そういったイベントの主催などの延長線上に「もじのイチ」の開催があるんですね。
そうですね。その辺りの活動をしていたのがコロナ禍よりも少し前なんです。そのあと、僕が書き物の仕事を始めたあたりから、サークル活動を止めてしまって。
マンガのイベントは小さいものでも結構生き残っていたり、二次のオンリーは復活してきていますが、小さな創作文芸オンリーはなくなってしまったな、と思って。みんなそろそろ飢えてきているんじゃないかと(笑)。それで「やるか!」と思いついたのが7月ぐらいです。
前から「やれば?」と周りに言われていたんですけど、「いやいや、しんどい」と断っていたんです。でもHUBのイベントでは40~50サークルぐらい集まったので、それぐらい集まるんだったら、じゃあやってみようか、と。
最初は40サークル入るくらいのレンタル会議室を都内で探していたんですけど、今回の会場は費用感が同じくらいで広さが倍以上だったので、じゃあこっちでいいか、と。
――企画、準備がスタートさせてみて、いかがですか。今のところ大変だな、と感じるところはありますか?
サークル数ももう少し伸びてほしい、と思いつつも、こんなものかな、と。
だいたい申し込む人ってスタートダッシュか、〆切間際の人か、どちらかなんですよね(笑)。だから、募集当日に10サークルぐらい応募があって、今は26サークルぐらいかな。あとはイベントでチラシを配っていつもと同じ40~50ぐらいに落ち着けば上々だろう、と思っています。
周知してもらうのはやっぱり難しいですよね。手ごたえが応募サークル数でしか分からないから、今どうなんだろう?と。協力印刷所さんに支援対象イベントの一覧に出してもらうように交渉したり、フライヤーを同人ショップに置いていただいたり、思いつくことはやっていっているところです。
つながりができることを楽しんでほしい
――もじのイチのアピールポイントはどういったところになりますか?
イベントのサブタイトルにもあるように、何の変哲もない、もう普通にサークルが集まって、文芸の同人誌を通じて、売り買いして、交流するだけのイベントだよ、っていうだけですかね。
今はそういったイベント自体も少なくなっちゃったので、「久々にこういうのもいいでしょ?」というハードルが下がった状態だということもあるので、まずは本当にシンプルな形でもう1回始めようというのが今回のイベントですね。
大きいイベントの方が売れるだろうと普通は思いますよね。コミケ、コミティア、文フリもだいぶ復活して盛り上がってきてるじゃないですか。
でも、それでは満足できない、ニッチなところ、忙しいイベントよりもまったりしたイベント、距離の近いイベントの方がいいという人は、昔からいると思うので、ちょっと新しくやってみるから来てみない?とは思いますね。
――小規模なイベントの魅力はどんなところだと思われますか?
ゆっくりサークルさんとお話できる空気感だというのはありますよね。やっぱり大きいイベントだとちょっと挨拶して、次はあっちに行って……ということがどうしても出てくると思いますし。
あとはそんなに売れなくても諦めのつくとこですかね(笑)。
――横のつながりができるのが大きいですよね。
小さいイベントではそこを一番楽しんでいただきたいな、と思います。
ガチャガチャの筐体をひとつ持っているので、当日会場に持っていこうかな、と。いつも何かしらそういう企画を用意しているんですよ。
参加サークルさんも会場内を回って、買い物してもらえればガチャを回せるようにしようと考えています。運営側で用意すると内需でも回るかな、楽しく買い物とかしてもらえるかなと思って。いつもなにかしらそういう景品を用意しています。
――最後に参加を検討されている方にメッセージをお願いします!
大きいイベントと違って、身構えずに気楽に。年明け一発目の気軽なイベントのつもりで来ていただければと思っています。小さいイベントなりに、爆売れするというものではないんですけど、サークルさん同士の交流も主催側で用意するので、小さいイベントの楽しみを味わいに来ていただけたらな、と思います。
もうひとつ言うと、一個人でもこのぐらいのイベントは開けるよ、というのもあるんですよね。最初の手続きや、箱の準備ができればこのぐらいの規模のイベントだったら主催できるので。イベントが少なくなった今、立ち上げたいな、と思ったら気軽にやってみてもいいんじゃないかな、と思います。
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(取材・文=ふくだりょうこ、撮影=市村愛美)