絵を描く人はもちろん、文章を書く人とっても大切な「色の表現」。日本人にとっては、戦隊モノのレッドなどの色はキャラそのもの。また、推し活でもキャラやメンバーに担当カラーがあるので、ファンの象徴です。
小説を書く上でも“どんな色か”を表す言葉は、作品全体の肝になってきます。
たとえば“黒髪”一つを表すのも「漆黒」「烏の濡れ羽色」「オニキスのような」と書くだけで一気に深みと優雅さが増します。
そんな中で、ぜひ使いこなして欲しいのが日本伝統の和色の表現。繊細で絶妙な色合いと美しい色名は創作心をくすぐります。文章が一気に情緒的になるので、ぜひつかいこなしてみてください。
赤系
思色(おもいいろ)
やや黄色がかった鮮やかな赤。緋色の別称でもあります。心で熱く燃える情念を炎の色に例えています。
唐紅(からくれない)
紅花で染めた濃い紅赤色のことです。真紅の別称でもあります。
朱殷(しゅあん)
時間がたった血のような暗い朱色のことです。血の色や血染めの色など凄惨な様子を表現する色です。
猩猩緋(しょうじょうひ)
緋の中でも特に強い黄みがかった朱色のことです。猩猩とは龍や麒麟のような中国の伝説の生き物。武士の陣羽織に多く見られました。
紫系
藍色鳩羽(あいいろはとば)
藍色がかった鳩羽色の意味で、青みがかった鈍い紫色のことです。
紫苑色(しおんいろ)
紫苑の花の色のような少し青みのある薄い紫色のことです。
ピンク系
聴色(ゆるしいろ)
紅花で染められた淡い紅色のことです。一般的には「一斤染」という色名で知られています。
古代、濃い紅色は大変高価で、身分が低い人には禁色でした。淡い色の聴色(ゆるしいろ)は、まさに誰でも着ることができる許された色だったのです。
乙女色(おとめいろ)
乙女椿の花のような黄みをふくんだ淡い赤色のことです。
青系
花浅葱(はなあさぎ)
花色がかった浅葱色の意味で、少し緑がかった鮮やかな青色のことです。
青白磁(せいはくじ)
雲がかすむ春の空のような、うすく淡い青緑色のことです。焼き物の「青白磁」の青みを帯びた美しい色に由来しています。
緑系
海松色(みるいろ)
海藻の海松 みるの色を表した茶みを帯びた深い黄緑色のことです。
黄色系
梔子色(くちなしいろ)
クチナシの実で染めた、少し赤みのある黄色のことです。
白系
月白(げっぱく)
月の光を思わせる薄い青みを含んだ白色のことです。月が登り、空がだんだん明るく白んでいく様子を表しています。
利休白茶(りきゅうしらちゃ)
薄い灰みがかった黄褐色のことです。 わび茶道の祖・ “千利休 せんのりきゅう” をイメージさせる上品で穏やかな白茶色です。
小町鼠(こまちねず)
ほんのりと赤みを帯びた淡い鼠色のことです。淡く、上品で華やかさのある白色です。江戸時代に、「四十八茶百鼠 しじゅうはっちゃひゃくねずみ」として流行した鼠色のひとつです。
黒系
呂色(ろいろ)
黒漆の濡れたような深く美しい黒色のことです。漆工芸の塗りの技法のひとつである呂色塗からきた色名で、蝋色とも書きます。
黒橡(くろつるばみ)
橡の実を砕いて煎じたものを鉄媒染で発色させた青みがかった黒色のことです。
文章内の表現はもちろん、キャラのイメージカラーが和色だったらすごく美しく情緒的ですよね。和風ファンタジーにもぴったりです。知れば知るほど掘り下げたくなる和色の世界、ぜひ楽しんでみてくださいね。