「I LOVE YOU」を「月が綺麗ですね」と翻訳した夏目漱石の逸話はとても有名ですよね。
これは漱石が国語教師だったころ、生徒がI LOVE YOUを「我、君を愛する」とそのまま和訳したことに対し「日本男児たるやそんな直接的な表現はしない。控えめに“月が綺麗ですね”などと言うものだ」と答えたとうエピソードが元になっています(諸説あり)。
たしかに、ストレートに「愛してる」「君が好き」というのはなかなかハードルが高いですよね。
現実ではもちろん、創作の世界ではいかにこの言葉を使わずに“I LOVE YOU”や“好き”の気持ちを表現するかは腕の見せどころ!
定番のものから、捻りのあるものまで、例をご紹介します。
「べ、別に、あんたのことなんて好きじゃないんだからっ!!!」
回り回って、もはや告白に近いフレーズがこちら。
ラブコメや学園ハーレム作品でよく聞く、ツンデレヒロインの決め台詞です。実はヒロインは主人公に思いを寄せていると読者に伝えるための、いわば定型文。そこを逆に利用して「あえて使う」という手法もおもしろいですよね!
「各駅停車で帰ろう」
シチュエーションを想像して、キューン……となってしまいますよね。
好きな人と一緒にいる帰り道。急行電車の方が早いのに、少しでも一緒にいたいからあえて各駅停車を選ぶ。「もっと一緒にいたい」と素直に伝えるのも良いですが、少し遠回しな表現の方がより胸に響くことも……
「今日、寒いね」
「寒いねと話しかければ寒いねと答える人のいるあたたかさ」という俵万智さんの有名な短歌がありますが、さりげない日常のやりとりの中でも心がときめく瞬間はたくさんあります。
気になる人に「おはよう」「おつかれ!」という挨拶をしてもらったときに、「今日、寒いね」または「めっちゃ暑くない?」などの一言が追加されるだけで、距離感がぐっと近づきます。その日は1日幸せな気分で過ごせそう♪
「ちゃんとご飯食べてる?」
日本人は家族間で「愛してる」などの言葉をなかなか交わしませんが、その代わりにこの言葉があります。
進学や就職で一人暮らしをした子供に、または高齢になって気がかりな祖父母や両親に「ちゃんとご飯食べてる?」と電話で聞くのは心配と同時に「いつでもあなたを思っている」と伝える言葉です。
「来年も一緒に行こう!」
花火大会や、クリスマスのイルミネーションなど毎年訪れる季節のイベント。好きな人と一緒にいればその瞬間だけでも幸せなのに、まさか来年の約束なんて、有頂天になってしまいますよね。
今が楽しくなければ絶対に出ない言葉なので、本当に嬉しい言葉です。告白や手を繋ぐきっかけにもなりそうな、愛のたっぷり詰まった言葉です。
「口ぐせ移っちゃった」
親しい人の口ぐせや方言、いつの間にか自分も使っていることってありますよね。
それは同じ時間を過ごしている時間の長さや濃密さ、そして相手を慕う気持ちがあるから。だからこそ、「口ぐせが移った」「いつの間にか真似してたみたい」なんて言われたら、これはつまり……?!と感じてしまう、愛の力のある一言です♪
「香水、何使ってるの?」
季節の訪れや、天気が変わるとき、私たちはしばしば“匂い”でそれを感じます。
夕方の住宅地の匂いや、学校のプールの匂い、ガスストーブの匂い、エモさと匂いは直結しています。大人になるにつれ、昔の恋人の香水の匂いがふと街で漂ってくると、当時の記憶が一気に蘇る、なんてことも。好きな人の匂いを嗅いでいると、ずっと一緒にいる気持ちになれるという思いを表したのがこちらの言葉。
同じ香水を使うと、「あの人たち、同じ匂いがする。まさか……?!」と気づかせるという、本当の意味での“におわせ”効果も期待できます
少し遠回しだからこそ、情緒的に響く「好き」を表す言葉たち。日本人ならではの奥ゆかしさや、照れ隠しも含め、すべて詩的に響くのでエモがいっぱいです!創作に使える表現は無限大なので、またの機会にご紹介します!